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【商業簿記】当期純利益を使って財務諸表をサクッと理解するコツ

約 12 分程度(目安)で読むことができます。

こんにちは。

簿記の最終目的地は、財務諸表と呼ばれる書類を作成することですが、本記事ではその財務諸表の相関関係についてみていくとともに簿記の全体像にも迫っていきたいと思います。
唐突ですが、簿記の最終目的地は何でしょうか。答えは前述のとおりです。簿記の学習を始めたばかりの頃はピンとこないかもしれません。しかし、このことは広大な簿記の学習過程で迷子にならないためにとても大切なことです。

  • 貸借対照表
  • 損益計算書
  • 株主資本等変動計算書(商業簿記のみで工業簿記は対象外)

株式会社が義務付けられているこの財務諸表は特に上場している企業については一般公開が義務付けられ、一般の方でもその書類をとおして、その会社の財政状況、経営状況を一目で把握することができるとても役に立つ書類でもあります。

その理由について少し触れるとともに本記事では加えて3つの財務諸表の相関関係(密接にリンクしていること)を明らかにすることで、簿記の全体像の理解を深めることを目標にします。さらに簿記を学習する上でだれしもが一度は抱くギモン(かな?)、貸借対照表、損益計算書の貸借が一致する理由についても、相関関係を明らかにする中で触れたいと思います。

それでは、まず、財務諸表から会社の財政状況、経営状況を一目で把握することができる所以についてみていきましょう。

簿記の主役、財務諸表のコツを知る前に財務諸表について簡単におさらい

簿記で最後に作成する財務諸表には「貸借対照表」、「損益計算書」、「株主資本等変動計算書」の3種類があります。


それぞれの財務諸表の内容、見方の概要は次のとおりです。

  • 貸借対照表
    企業の財政状況を明らかにするための書類。
    具体的には「負債」及び「純資産」は資金の調達方法、「資産」はその資金の運用形態を示す。
  • 損益計算書
    企業の経営状況を明らかにするための書類。
    具体的には「収益」は売上などの収入、「費用」は売上などの収入のためにかかったコスト、そして「収益」から「費用」をひいたものがもうけ(当期純利益)を示す。
  • 株主資本等変動計算書
    企業の株主資本(純資産)の状況を明らかにするための書類。
    具体的には貸借対照表の「純資産」にフォーカスし、その純資産の変動額、最終的な確定額を示す。

3種類の財務諸表「貸借対照表」、「損益計算書」、「株主資本等変動計算書」についてだいたい理解できたでしょうか。

理解できましたら、本題の財務諸表の相関関係について明らかにしていきましょう。

なお、本記事の財務諸表の相関関係を明らかにする目的は簿記の最終目的地である3つの財務諸表が密接に関連したものであるということを理解してもらうことにあります。

当期純利益を使って簿記の主役、財務諸表をサクッと理解するコツ

当期純利益からみた財務諸表の相関関係

財務諸表の相関関係を理解するには損益計算書からはじき出される当期純利益をとおしてみると理解しやすいです。

むしろ、当期純利益でないと3つの財務諸表の相関関係を明らかにすることはできないと思っています。

なお、説明をシンプルにするために次の条件を前提として、話を進めていきます。

  • 株主資本の当期変動額は当期純利益のみとする。
    (いいかえれば株主資本の資本金、資本剰余金、利益剰余金のうち、資本金及び資本剰余金は当期に変動がなかったものとする。
    (当期純利益が含まれる)利益剰余金のみ当期に変動があったとする。)
  • 当期純利益はすべて企業の純資産(資金調達源)にプラスされるものとする。

では、上記仮定にて、当期純利益からみた財務諸表相関図の全体図をまず見ていただきます。

右から「損益計算書」→「株主資本等変動計算書」→「貸借対照表」と当期純利益でリンクしていることがみてとれると思います。

では、次にそのリンク内容について右からもう少し詳しくみていきましょう。

損益計算書と株主資本等変動計算書の相関関係

最初に損益計算書と株主資本等変動計算書に着目してみていきます。

上図から次の点がみてとれます。

  • ①損益計算書の収益と費用の差額が当期純利益になります。
  • 当期純利益分、株主資本等変動計算書の当期変動額の繰越利益剰余金にプラスされ、当期純利益分株主資本が増えたことになります。
    なお、プラスされた繰越利益剰余金はこれまでの企業活動で蓄えられた利益剰余金(もうけ)のうち、使い道がまだ決まっていないお金を意味します。

次節の内容に被りますが株主資本等変動計算書は貸借対照表の純資産をフォーカスしたものなので、株主資本等変動計算書の利益剰余金が当期純利益分増えたということは貸借対照表の純資産(の利益剰余金)が増えたことと同じになります。

株主資本等変動計算書と貸借対照表の相関関係

前節で少し触れてしまいましたが株主資本等変動計算書と貸借対照表に着目してみていきます。

上図から次の点がみてとれます。

  • ①株主資本等変動計算書において当期純利益分、利益剰余金の繰越利益剰余金がプラスされています。
  • ②プラスされた繰越利益剰余金を含む利益剰余金は貸借対照表の利益剰余金にそのままそっくり当てられます。(貸借対照表の純資産を求めるときは資産と負債の差額を利益剰余金とするのではなく、株主資本等変動計算書ではじき出された利益剰余金が適用されます。)

以上から損益計算書の当期純利益が株主資本等変動計算書を経由して貸借対照表の利益剰余金の一部として反映される(「損益計算書」、「株主資本等変動計算書」、「貸借対照表」が当期純利益で密接にリンクしている)ことが理解できるのではと思います。

簿記の主役、財務諸表をサクッと理解するコツの補足、繰越利益剰余金の行方

ついでに少し踏み込んで、損益計算書の当期純利益とリンクする貸借対照表の繰越利益剰余金の行方(使い道)についてみておきましょう。

繰越利益剰余金は前述のとおり、まだ使い道が決まっていないお金のことです。

このため、繰越利益剰余金の使い道を決めなくてはなりません。
(当期純利益から株主に還元する必要があるからです。)

繰越利益剰余金の使い道を決める一般的な順序を示します。

  1. 株主総会で剰余金の配当金額を決定
    一株、いくらで、株主へ配当を行うか(株主配当金)を決めます。
  2. 会社法で規定された利益準備金の金額を計算
    会社法によって剰余金の配当時、利益準備金を積み立てなければなりません。利益準備金の積み立て額は次の計算結果(いずれか小さいほう)によって求められます。
    ①株主配当金×1/10
    ②資本金×1/4-(資本準備金+利益準備金)
    ※利益準備金は債権者への返済などに充てられます。

簿記の主役、財務諸表をサクッと理解するコツの補足、素朴なギモンとしてよく聞く貸借対照表、損益計算書の貸借が一致する理由

最後に「損益計算書」、「株主資本等変動計算書」、「貸借対照表」が当期純利益で密接にリンクしていることを明らかにしたついでに素朴なギモンとしてよく聞く貸借対照表、損益計算書の貸借が一致する理由について考えてみたいと思います。


損益計算書の貸借についてはその差額が当期純利益となることから、貸借が一致することは至極当然ですよね。


では貸借対照表の貸借が一致するのはなぜか考えてみます。

簿記では日々の経営活動(または製造活動)について「資産」、「負債」、「費用」、「収益」の様々な勘定科目で仕分け作業が行われますが、仕分けの借方と貸方は、財務諸表の区分に関係なく行われます。

例えば、商品を掛けで販売した場合では

  • (借)売掛金(資産勘定科目) (貸)売上(収益勘定科目)

となり、左側は貸借対照表の勘定科目、右側は損益計算書の勘定科目です。

では、財務諸表の区分に関係なく仕分けされるのに、貸借対照表として整理されたとき、貸借がなぜ一致するのか。

それは、経営活動で生まれた当期純利益(損益計算書の収益と費用の差額)は、【今回の仮定では(※前記参照)】貸借対照表の資産と負債の差額と等しくなるからです。

経営活動で生まれた当期純利益は、プラスの場合、そのままその企業の資金調達源(貸借対照表の純資産)となります。

なので今回の仮定のように企業全体の純資産の変動が当期純利益しかなく、かつそのすべてが純資産にプラスされると仮定した場合では損益計算書の貸借の差額と、貸借対照表の貸借の差額は当期純利益の変動額と等しくなります。

※実際の企業全体の純資産の変動を説明するには損益勘定の仕訳(損益計算書)の当期純利益だけでは十分ではありません。

しかしながら、損益計算書と貸借対照表の純資産の変動の関係を説明するには損益計算書の当期純利益のみに着目すればよいでしょう。

(少なくとも簿記2級の範囲では。)

なぜかといいますと、損益計算書の当期純利益以外の純資産の変動要因として株式の新規発行による資本金の増加、"その他有価証券"の決算時の評価替えにより発生した差額金などありますが、いずれも貸借勘定の仕訳(貸借対照表)のものであり、損益勘定の仕訳(損益計算書)とは関係がないものばかりだからです。

簿記の主役、財務諸表は当期純利益を通せば、サクッと理解できる

本記事では簿記の最終目的地である3つの財務諸表の説明及び、相関関係についてご紹介しました。

広大な簿記の試験範囲においても、この最終目的地の3つの財務諸表の相関関係がイメージできていれば、学習中に道に迷ってしまった場合でも元の道に戻るための指標となってくれるのではと思っています。

なお、財務諸表は工業簿記も対象ですが、本記事では株主資本等変動計算書を財務諸表の一つとして組み込んだ内容であるため、工業簿記よりも商業簿記を意識した内容になっています。

ただ、株主資本等変動計算書以外の貸借対照表、損益計算書の財務諸表について工業簿記と商業簿記に基本的な考え方は同じですので、工業簿記に対する理解にもつながっていくでしょう。

商業簿記、工業簿記の全体像の理解を深める一助になれば、これ程嬉しいことはありません。

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