工業簿記では「原価計算」とつく用語がたくさんあります。
「何が違うのー、泣きたくなる(T∇T)」と感じたことはありませんか(笑)
個別原価計算、実際原価計算、直接原価計算、もう頭の中はパニック状態。
今振り返ると、わかっていなかった原因はシンプル。
工業簿記の全体像が全く見えていませんでした。
工業簿記は商業簿記のように内容の改定が少なく、しかも理路整然として、対策が立てやすい分野です。
原価計算もしかり。
今回は、末尾に「原価計算」とつく用語をまとめて解決します。
工業簿記の原価計算は全部で6種類
工業簿記の原価計算の種類は全部で6種類ありますが、2種類1セットで3つの用途に分類できます。
注意したいのは各々、独立して利用するのではなく、用途に応じて組み合わせて使います。
ですので『***原価計算』は原価計算で行われる、最小単位、これ以上、細かく分けることができないものといえます。
ということで3つの用途による分類で『***原価計算』を解説します。
6種類の原価計算を3つの用途に分類して解説
実際原価計算と標準原価計算の違いは実費か目標値かどうか
実際原価計算と標準原価計算は製造原価を実費で計算するか目標値で計算するかで使い分けます。
- 実際原価計算
実際にかかった費用(実際原価)から製品の原価を求める考え方 - 標準原価計算
目標とする費用(標準原価)から製品の原価を求める考え方
実際原価計算では「製品を製造するのに実際にかかったコスト」で計算します。
たいして標準原価計算ではこれまでの実績と経験などから「製品を製造するのにかかるコストの目標値」で製造原価を計算します。
この違いから次のことがいえます。
実際原価計算はコストの無駄を把握しずらく、標準原価計算はコストの無駄を把握して分析しやすい。
標準原価計算の方法は別記事に詳しく解説しています。
個別原価計算と総合原価計算の違いはオーダーメイドか大量生産か
個別原価計算と総合原価計算は製造原価をオーダーメイド方式で計算するか大量生産方式で計算するかで使い分けます。
- 個別原価計算
オーダーメイドの生産形態を想定して原価計算を行う考え方 - 総合原価計算
同じ規格の製品を毎月大量に生産する形態を想定して原価計算を行う考え方
個別原価計算は「オーダーメイドの製造にかかったコスト」で計算します。
例えば、特注のスーツ、革靴、家具などがあります。
対して総合原価計算では「同じ種類の製品を大量生産するときにかかったコスト」で計算します。
例えば、ファストファッションはサイズ、色などを変えながら大量生産することで価格を抑えています。
自動車メーカーも総合原価計算の対象になります。
この違いから次のことがいえます。
1個あたりの製造原価は個別原価計算では製品ごとに計算、総合原価計算では平均値で計算。
全部原価計算と直接原価計算の違いは固定費を含めるかどうか
全部原価計算と直接原価計算は製造原価を建物などの固定費を含めて計算するかどうかで計算するかで使い分けます。
- 全部原価計算
変動費、固定費(建物、設備などの減価償却費)すべてひっくるめて原価計算を行う考え方 - 直接原価計算
固定費(建物、設備などの減価償却費)を含まず変動費のみで原価計算を行う考え方
全部原価計算では変動費だけでなく固定費も含めたコストで計算します。
対して直接原価計算では固定費を含めない変動費のみのコストで計算します。
変動費は生産数に比例して増えていく費用で例えば材料費、労務費があります。
対して固定費は生産数に関係なく、必ず発生する費用、例えば機械の減価償却費などがあります。
この違いから次のことがいえます。
全部原価計算と直接原価計算の違い
固定費と生産効率は直接的な関係がないため、固定費を含んだ全部原価計算よりも固定費を含まない直接原価計算のほうが現場の状況を把握しやすい
全部原価計算の固定費は売上原価に含まれますが、直接原価計算の固定費は売上原価に含まれません。
直接原価計算の固定費は販売費の固定費と同じ扱いで営業利益を求めるときの損益計算書上で計上します。
最後に
実際原価計算と標準原価計算、個別原価計算と総合原価計算、全部原価計算と直接原価計算は3つの用途によって使い分けることをおさえておけば、混乱しずらいと思います。
各原価計算は用途によって使い分け
- 実費か目標値か
実費で計算するときは実際原価計算
目標値で計算するときは標準原価計算 - オーダーメイドか大量生産か
オーダーメイドでは個別原価計算
大量生産では総合原価計算 - 原価に固定費を含むかどうか
固定費を含まないときは直接原価計算
固定費を含むときは全部原価計算