お疲れ様です。
簿記の学習は進んでいますか^^
私が経験した商業簿記のプチ疑問の第3弾を紹介したいと思います^^
今回の題目は次のようになります。
- 貸倒引当金はなぜ負債でなく資産のマイナスなのか?
- 退職給付引当金繰り入れ時、費用はなぜ退職給付引当金繰入でないのか?
- 返品調整引当金繰入額を決める時、なぜ、売上総利益率をかけるのか?
貸倒引当金はなぜ負債でなく資産のマイナスなのか?
貸借対照表上では貸倒引当金以外の引当金は負債勘定として表示されるのに対して、貸倒引当金は資産勘定(しかもマイナス)として表示されます。
「引当金の中でどうして貸倒引当金だけ資産のマイナスで表示されるの?」
簿記試験の勉強の途中で一度はあたるギモンだと思います。
その理由を知るには、貸倒引当金と貸倒引当金以外の引当金の特徴を比較してみるのが一番わかりやすいかと思います。
ということで比較した結果を表にしてみました。
なお、貸倒引当金以外の引当金には次のようなものを指します。
貸倒引当金以外の引当金
- 修繕引当金
- 商品保証引当金
- 退職給付引当金
- 賞与引当金
- 売上割戻引当金
- 返品調整引当金
貸倒引当金と貸倒引当金以外の引当金の比較 | |||
比較項目 | 貸倒引当金 |
貸倒引当金以外の 引当金 |
資産か負債かの判定 |
引当金を取り崩す時の原因が予定通りか予定外か | 予定外 | 予定通り | 【貸倒引当金について】 予定通りの時(得意先が倒産などしなければ)、将来も会社のもののままであるお金→負債ではなく資産に近い 【貸倒引当金以外の引当金について】 予定通りの時、将来は会社のものではなくなることが確実なお金→資産ではなく負債に近い |
資産勘定との因果関係 | あり 貸倒引当金の金額は決算時の売掛金、受取手形といった債権の資産勘定の金額から決まる。 さらに売掛金、受取手形の実質的な資産価値を負債に位置する貸倒引当金によって下げる効果もある。 (貸倒引当金によって不渡り時の被害額が減らすことにつながるいうことですね。) |
なし いずれの資産勘定とも関連性がない。 |
【貸倒引当金について】 貸倒引当金は負債の性質をもつが、資産勘定の実質的な価値を減らす。→負債ではなく資産に近い 【貸倒引当金以外の引当金について】 貸倒引当金以外の引当金は負債の性質をもつ。一方、資産勘定に何の影響ももたない。→資産ではなく負債に近い |
貸倒引当金が負債の性質を持ちながら、同引当金のリスクヘッジ的な目的、資産勘定との密接な関係性から、貸倒引当金以外の引当金とは少なくとも、一線を画すものであると同時にさらには貸借対照表で資産のマイナスとして記載される所以についてもご理解いただけるのではないでしょうか。
退職給付引当金繰入時、費用はなぜ退職給付引当金繰入でなく退職給付費用?
決算の時に必要な引当金を計算して、残っている分との差額分だけ補充する時(繰り入れ時)の仕訳は次のようになりますね。
借方科目 | 金 額 | 貸方科目 | 金 額 |
〇〇〇引当金繰入 | △△△△ | 〇〇〇引当金 | △△△△ |
ですが、"簿記の試験"では、退職給付引当金の繰り入れ時の仕訳は、その他の引当金と異なり、借方の勘定科目が〇〇〇引当金繰入でなく退職給付費用になります。
借方科目 | 金 額 | 貸方科目 | 金 額 |
退職給付費用 | △△△△ | 退職給付引当金 | △△△△ |
「退職給付費用でなくて退職給付引当金繰入ちゃうん?」
簿記試験の勉強の途中で一度はあたるギモンだと思います。
そのギモンに対する答えは次のとおりです。
【経理の実務】では退職給付費用勘定でも退職給付引当金繰入勘定でもどちらを使用してもよい。
ちなみに退職給付費用勘定の方がよく用いられるとのこと。
【簿記試験】では退職給付引当金繰入勘定ではなく退職給付費用勘定を事実上、用いることになっている。
ということで、簿記試験では、退職給付引当金の繰入時の仕訳は他の引当金とは異なる例外的なケースとして覚えてしまうしかないということです。
簿記試験では利用できる勘定科目は指示されるので、どちらにするか迷うことは少ないとは思いますが。
こうなると、逆に退職給付費用勘定ができた経緯が気になりますね^^;
返品調整引当金繰入額を決める時、なぜ、売上総利益率をかけるのか?
決算の時に引当金の金額を決める時は、必要な額をそのまま充てるか、基準となる額に任意の設定率をかけるかに大きく分けられると思います。
引当金の金額の求め方
- 貸し倒れ引当金
基準となる額に任意の設定率かける - 修繕引当金
必要な額をそのまま充てる - 商品保証引当金
必要な額をそのまま充てる - 退職給付引当金
必要な額をそのまま充てる - 賞与引当金
必要な額をそのまま充てる - 売上割戻引当金
基準となる額に任意の設定率かける - 返品調整引当金
基準となる額(売価)に決まった基準の設定率(売上総利益率)をかける
ひとつだけ、金額の決め方が異なる引当金がありますね。
返品調整引当金です。
「返品調整引当金はどうして、一律の基準の設定率で決めるのか?」

上図のとおり、返品調整引当金は、製品の利益部分の金額が充てられます。
すなわち返品調整引当金の金額は売価に売上総利益率を掛けて求められます。
ではなぜ、利益部分だけでよいかですが、原価の部分は返品された後も再度、売ることができる(仕入に再振り替えできる)ためです。
返品調整引当金だけ、決まった基準の設定率、売上総利益率をかけて求める必要があることがご理解いただけるのではと思います^^
最後に
私が経験した商業簿記のプチ疑問についてみてきましたが、簿記のルールと割り切って、覚えてしまう方が早いものがある一方、理論的に説明ができるものもあることが、今回の内容でご理解いただけたかもしれません。
今回の要点をまとめます。
- 貸倒引当金は単なる負債ではなく資産勘定の価値を下げる役割をもっている。
そのため、貸借対照表では資産のマイナスとして表示される。 - 簿記試験と切り離せば、退職給付引当金繰入も実務では間違いではない。
しかし、簿記試験では事実上、退職給付費用で、退職給付引当金繰入は認められていない。
(勘定科目の選択肢に登場すれば、話は変わってきますが) - 返品時、原価部分はまた売れるので、損失は利益部分だけ考えればよい。
そのため、返品調整引当金は利益部分だけ賄えればよい。
すなわち、売価に売上総利益をかけて求めたものが返品調整引当金の金額になる。
また気づいたことがありましたら、プチ疑問について紹介していきたいと思っております。