本記事では
- 期の途中で固定資産を売却した時、減価償却(間接法)で減価償却累計額が計上されない理由
- 月割り計算か日割り計算の見極め方
- 減価償却の直接法か間接法の見極め方
について解説します。
期の途中で固定資産を売却した時、間接法なのに減価償却累計額が計上されない?
減価償却は、決算時に行うイメージがありますが、期の途中で行うこともあります。
例えば固定資産を売却した時。決算前でも、減価償却を行う必要があります。
期の途中で行う減価償却の仕訳のしかたが決算時の仕訳(間接法)と異なるので注意が必要です。
減価償却の仕訳方法は「直接法」と「間接法」の2種類です。
直接法は、減価償却費を固定資産を減らす方法で、固定資産の価値がわかりやすいです。
間接法は、固定資産を減らさず、減価償却累計額を計上する仕訳方法です。
この違いについて解説します。
決算時の減価償却の仕訳は間接法では次のようになります。
借方科目 | 金 額 | 貸方科目 | 金 額 |
減価償却費 | xxxx | 減価償却累計額 | xxxx |
間接法なので、貸方に減価償却累計額が計上されていますね。
続いて、期の途中で固定資産を売却したとき仕訳方法について実際の仕訳問題をとおして解説します。
固定資産売却時の仕訳問題
当期(4月1日~翌年3月31日)の7月31日に備品(取得原価 200,000円、減価償却累計額 150,000円)を売却し、代金 50,000円は、当座預金に振り込まれた。
なお、この備品の減価償却は償却率 30%の定率法とし、間接法で記帳することとする。
当期開始時から売却日までの減価償却費を月割りで計上する。
この時の仕訳を行いなさい。
解答を解説します。
まず、4月1日から売却までに発生した減価償却費を求めます。
売却した時期が期の初めからちょうど4ヶ月目だったので、次の計算で求まります。
備品の減価償却は償却率 30%の定率法
(200,000円-150,000円)×30%×4ヶ月/12ヶ月 = 5,000円
求めた減価償却費で仕訳をします。
借方科目 | 金 額 | 貸方科目 | 金 額 |
減価償却費 | 5,000 | 備品 | 200,000 |
減価償却累計額 | 150,000 | 固定資産売却益 | 5,000 |
当座預金 | 50,000 |
一般的な解答です。
気付いたかもしれませんが、減価償却累計額が売却前と後で変わっていない。
えっ、でもちょっと待ってください。
売却前と後で減価償却累計額が150,000円から変わっていない。
間接法では減価償却費を計上したらセットで減価償却累計額を計上するはずでは?
売却時、減価償却累計額が変化しない理由です。
固定資産売却時に減価償却累計額が変わらない理由
減価償却累計額は、所有権が現在、自分にある固定資産のこれまでの償却累計額を記録するための勘定科目。
そのため、売却によって自分のものでなくなった固定資産の償却累計額を記録する理由がない。
固定資産の売却が決まったとき、4月1日から4ヶ月分の減価償却費の仕訳を省略していたからなんですね。
この差分の仕訳をあえて行ってみると理由がみえてきます。
では行ってみましょう
(通常の教科書では、このような仕訳は行いません^^;)
4月1日から4ヶ月分の減価償却費を求めます。
備品の減価償却は償却率 30%の定率法
(200,000円-150,000円)×30%×4ヶ月/12ヶ月 = 5,000円
4月1日から4ヶ月分の減価償却の仕訳
借方科目 | 金 額 | 貸方科目 | 金 額 |
減価償却費 | 5,000 | 減価償却累計額(4月1日から4ヶ月分) | 5,000 |
解答になかった減価償却累計額(4月1日から4ヶ月分)が現れます。
この時点で固定資産の減価償却累計額は150,000円から155,000円です。
次に固定資産の売却だけの(減価償却を含まない)仕訳を行ってみます。
固定資産の売却だけの(減価償却を含まない)仕訳
借方科目 | 金 額 | 貸方科目 | 金 額 |
減価償却累計額 | 155,000 | 備品 | 200,000 |
当座預金 | 50,000 | 固定資産売却益 | 5,000 |
2つの仕訳を足し合わせると、
借方科目 | 金 額 | 貸方科目 | 金 額 |
減価償却費 | 5,000 | 備品 | 200,000 |
減価償却累計額 | 155,000 | 減価償却累計額(4月1日から4ヶ月分) | 5,000 |
当座預金 | 50,000 | 固定資産売却益 | 5,000 |
さらに減価償却累計額の借方と貸方を相殺すると解答と同じになります。
借方科目 | 金 額 | 貸方科目 | 金 額 |
減価償却費 | 5,000 | 備品 | 200,000 |
減価償却累計額 | 150,000 | 固定資産売却益 | 5,000 |
当座預金 | 50,000 |
売却までの未計上の減価償却累計額がなくなっていたわけではなく、減価償却と売却の仕訳をまとめた行った結果、表示されていなかっただけだったことがわかりますね。
月割り計算か日割り計算の見極め方
期の途中で利息の仕訳を行う時、月割りか日割りか、どちらで計算すればいいのか知らなければなりません。
問題文に月割りまたは日割りの指示がなかった時、どちらで計算すればいいか迷いやすい
月割り計算か日割り計算の見極め方を紹介します。
月割りか日割りの見極め方
- 問題に月割り、日割りの指示があれば従う。
- 端数利息(はすうりそく)の問題であれば、日割り
- 端数利息(はすうりそく)以外の問題であれば、月割り
端数利息の例では
・定期的に利息がもらえる有価証券(社債など)の売買を期の途中でおこなったときの残りの利息に対する権利の金額
があります。
そして、日割り計算のときは月によって日数が違うことに注意しなくてはなりません。
月ごとの日数に有名な覚え方があります。
31日以外の月を覚えるという方法です。
31日以外の月の覚え方
- 西向く侍(二・四・六・九・士)
"にしむくさむらい"と覚えます。
・に→2月
・し→4月
・む→6月
・く→9月
・さむらい→士→11月
↓
2月は28日、それ以外は30日と覚えます。
便利だな
では端数利息を求め方を実際の問題で解説します。
端数利息(日割り計算)の問題例
当月7月2日に売買目的でA社社債(額面金額100,000円)を額面100円につき、96円で購入し、代金は端数利息とともに現金で支払った。
同債券の利息は年率7.3%であり、利払日は3月末日である。
この仕訳を行いなさい。
社債を売ってからも売り主(元の持ち主)に権利が残る利息の持分(端数利息)を計算します。
売り主の持分は最後の利払い日から売却するまでの利息分です。
売り主に利息の権利があった日数を求めます。
西向く侍(にしむくさむらい)より
4月(30日)、5月(31日)、6月(30日)、7月(2日)で計93日。
よって売り主分(端数利息)は
100,000円×7.3%×93日/365日 = 1,860円
この社債を購入するときの仕訳は次のようになります。
借方科目 | 金 額 | 貸方科目 | 金 額 |
売買目的有価証券 | 96,000 | 現金 | 97,860 |
有価証券利息 | 1,860 |
有価証券利息は収益勘定ですが、売り主分なので、借方に計上します。
減価償却の直接法か間接法の見極め方
減価償却の問題で間接法か直接法で解くのか明示してくれないときがあります。
「間接法ではなく、直接法で減価償却しなさい」という感じでいつも明示してほしい
間接法か直接法か明示されていない場合は基本的に直接法です。
何も指定がない場合は直接法
例えばですが、ソフトウェアの場合は、直接法しか認められていません。
なので、下記の仕訳はNGです。
NG例
借方科目 | 金 額 | 貸方科目 | 金 額 |
ソフトウェア償却 | xxxx | ソフトウェア償却累計額 NG! | xxxx |
ソフトウェアは直接法限定なので、正解は
正解
借方科目 | 金 額 | 貸方科目 | 金 額 |
ソフトウェア償却 | xxxx | ソフトウェア | xxxx |
直接法限定の資産勘定について紹介しておきます。
直接法限定の資産勘定
- 無形固定資産
- ソフトウェア
- のれん
ブランド力などのことです。 - 特許権、商標権など
- 有形固定資産
- なし
直接法限定は無形資産のみ
無形固定資産は直接法のみ認められています。
有形固定資産(建物、車両運搬具、備品など)は直接法、間接法両方認められています。
最後に無形固定資産の減価償却時の仕訳例を紹介しておきます。
ソフトウェアの減価償却
借方科目 | 金 額 | 貸方科目 | 金 額 |
ソフトウェア償却 | 10,000 | ソフトウェア | 10,000 |
のれんの減価償却
借方科目 | 金 額 | 貸方科目 | 金 額 |
のれん償却 | 10,000 | のれん | 10,000 |
特許権の減価償却
借方科目 | 金 額 | 貸方科目 | 金 額 |
特許権償却 | 10,000 | 特許権 | 10,000 |
無形固定資産の減価償却時の借方の勘定科目は○○○償却